2024年 10月 10日
“取り木族”現る
本校の”樹木医補”養成講座では、樹木の苗をつくり、増殖させる技術の一つとして取り木(とりき)を体験します。
取り木とは親となる樹木の枝など、体の一部を発根させて切り取ることで苗をつくる方法です。
親木と同じ遺伝子を持つクローンを得ることができます。
例年、取り木を経験する機会は学校生活の中で一度だけですが、
今年は樹木に関心をもつ学生たちで結成された班が、2年生の課題研究でも取り木に挑戦しています。
テーマは「在来樹種の効率的な増やし方」
近年、地域の生物多様性を向上させるため、在来種を使った緑化が求められていることがテーマ設定の背景です。
様々な樹種、特に緑化樹木としての生産量が少ないものを中心に取り木が成功する条件を調べています。
5月に山梨県増穂実習地の樹木に、枝を発根させるための処理を行います。
空中取り木(または高取り法)と呼ばれる方法を用います。
親にする木を決めたら、まず、発根させたい箇所の樹皮を1~2cmほどの幅でぐるりと一周剥ぎ取ります。
環状剥皮(かんじょうはくひ)という操作です。
樹皮を剥ぐときに入れる切れ込みが浅すぎるとうまく剥げず、深すぎると風などで枝が折れやすくなってしまうため、いい塩梅を見極めなくてはいけません。
次に、剥いだ部分の周囲を湿らせた水苔で覆い・・・
乾燥しないようビニールで包んで両端を縛っておきます。
遮光のため、さらに上からアルミホイルを被せます(どれほど効果があるかは不明)。
あとは、このまま数か月、発根するまで放置します。
比較を行うために、同じ処理をいろいろな樹種や個体に施します。
次々と怪しいオブジェが生成されていきます。
ひたすら取り木を行うこの班の学生たちを、私は心の中で”取り木族”と呼んでいます。
併せて、処理を施した枝や親木、環境など、成否に影響しそうな条件を記録・計測します。
上の写真は、光のあたり具合を調べるために、360度カメラで周囲を撮影している様子です。
このような画像を後で解析し、開空度(または天空率)という指標を算出します。
9月、設置から4か月が経過しました。
上の写真は、ヒトツバカエデです。
ビニールの包みを開いて、中身を確認してみると・・・
しっかりと根が出ていました。
ちょっと見ないうちに、立派になって、と久しぶりに親戚の子に会う感覚です。
処理をした枝の中には残念ながら枯れてしまったものもありますが、それなりのデータが得られそうで、一安心です。
この後、もう少し放置してから切り取り、発根の程度を評価する予定です。
取り木族たちの研究がうまくまとまりますように。
(ふみ)