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2024年 9月 24日

落ち葉早食い!?選手権

サッカーなどのチームスポーツでは、アウェイ(相手の本拠地)よりもホーム(自分の本拠地)でプレーする方が有利とされています。
普段から慣れ親しんだ近場のフィールドの方が、移動による疲労や精神的なプレッシャーも少なく、選手が本来の力を発揮しやすいのでしょう。

スポーツではありませんが、森の中で落ち葉が分解する速度を競ったときも、これと似たような現象が起きます。
森の分解者たちによる「落ち葉の早食い競争」をイメージしてもらうとよいかもしれません。
気候などの条件が同じであれば、ある植物の落葉は他の場所(アウェイ)よりも、その植物が実際に生育している場所(ホーム)の方が早く分解されるのです。
これは「ホームフィールド・アドバンテージ」現象と呼ばれています。

落葉の分解は生態系の物質循環の一端を担っており、その仕組みを理解することは大切なことです。
今年の2年生の課題研究では、植物班の一つが簡単な方法で「ホームフィールド・アドバンテージ」現象が確認できるか、実験を行っています。
3つの異なるタイプの森林で採集した落ち葉を、それぞれの場所に配置して分解速度を比べてみるというものです。

5月に山梨県の増穂実習地で、林床の落ち葉を集めます。

落ち葉をブルーシートに広げ、天日干しでカラカラに乾燥させます。
広葉樹林、アカマツ林、ヒノキ林の3タイプの森林の落ち葉を集めました。

上の写真は、アカマツ林で集めた落ち葉です。

落ち葉をメッシュバッグに詰め、後で分解量を調べられるよう重さを測っておきます(「リターバッグ法」と呼ばれる調査法です)。
ある程度の量が入る方が結果がわかりやすそうなので、野菜用の収穫ネット(玉ねぎが入ってるやつ)を使いました。
落ち葉を種類ごとに分けた方が、詳細な情報が得られそうですが、今回は一緒くたです。

同じ標高帯の複数の調査地点に、3種類ずつバッグを配置します。
ホーム(その場所にあった落ち葉)が1つ、アウェイ(他の場所にあった落ち葉)が2つです。
10月まで5か月間このまま放置し、分解によってどのくらい重さが減少するか調べる予定です。

今月、設置から4か月が経過したため、様子を確認しに行ってみると・・・

なんと、複数設置したバッグのうちのいくつかに、キノコが生えていました。

メッシュの隙間をかいくぐって、顔を出しています。可愛らしいです。
菌類がとりつき、落ち葉を分解している証拠でしょう。

付近の落ち葉をめくると、白い菌糸も観察できました。
場所によって、分解量に違いが出るでしょうか。
来月の計測が楽しみです。

なお、今回注目している「ホームフィールド・アドバンテージ」現象は、つい最近そのメカニズムが明らかにされました。
その場所の土壌に特有な微生物の集団が存在することで、効率的に落葉が分解されているそうです(詳しくは[コチラ]をご覧ください)。
分解に関わる菌類などの種類によって得意不得意があり、場所ごとに最適なメンバー構成ができているのでしょう。

目には見えづらい世界の出来事ですが、微生物たちがそれぞれの個性を発揮してはたらいていると考えると親しみがわいてきます。

(ふみ)

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