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2020年 11月 11日

ミョウガの果実

食用として栽培され、人里近くでしばしば野生化しているミョウガ

これまで花はよくみていたものの、結実した姿はみたことがありませんでした
ミョウガは五倍体(2n=55)のため不稔性で、もっぱら地下茎で増えているのだろうと考えていました

ところが、、、
今年、はじめてミョウガの果実を確認しました!

林床のミョウガの果実

葉や偽茎はすっかり枯れて倒れている中、
真っ赤に口を開けたような果実が、地上から顔を出していました

毎年訪れている場所ですが、これまで気づかずに見落としただけなのか、今年が特別なのか、、、???

調べてみたところ、
冷夏の年や夏季冷涼な地域では、稀に結実がみられることがあるようです

もう少し詳しく、ミョウガの栽培実験に関する文献をみると、

矢澤ら(1985)は、ミョウガの種子形成の条件として、
・受粉時およびその後の生育温度が20℃前後であることが必要
・受粉後に種子が完熟するまでの期間として45~50日間が必要
としています

また、安谷屋(1991)の実験は、ミョウガの結実に影響する要因として、
開花期に受粉が成功するには20~25℃の好適な温度域が確保されることに加え、
多湿条件(終日約70%以上)の維持が重要であることを示唆しています(*)

これらの情報を総合すると、ミョウガが結実するには、
開花期に20~25℃の気温と高い湿度が維持され、
受粉後約50日間、生育に適した条件が持続すること
が、必要ということになります

今年、果実が確認できたのも、約2か月前の9月前半に開花した個体が、このような条件をうまくクリアできたのかもしれません
(7~8月に開花したものは暑すぎて受粉できず、9月後半以降に開花したものは受粉できても果実が熟す前に枯れてしまうのかも?)

一般的に、ミョウガの果実になかなか出会うことができないのは、奇数倍体であるだけでなく、
国内では、自然状態で結実の条件を満たす場所が限られている(?)ことも、一つの要因なのかもしれません

いつか真相を調べみたいものです

おまけ
たくさん結実していたため、
せっかくなので少し頂戴して分解してみました

分解した果実(左)と分解する前の果実(右).
3つに裂開する蒴果で、内側が鮮やかな赤色です. 黒い種子が白い仮種皮に包まれています.

試しに、果実の赤い部分を生で1枚食べてみたところ、
水っぽいミョウガの味でした
白い仮種皮は無味です

色鮮やかなので、動物散布される他の植物のように、
多少なりとも甘みがあるかもしれないと予想しましたが、期待外れでした

鮮やかな見た目にどんな役割が隠されているのでしょうか
疑問は尽きません

(ふみ)


* 気温が低すぎたり高すぎる条件(15℃および30℃)下では、花粉管の伸長が抑制され、低湿度下では花粉発芽や花粉管伸長力が低下することが報告されています(安谷屋・比嘉, 1988)

引用文献
・安谷屋信一, 比嘉照夫. (1988). ミョウガの花粉発芽および花柱内花粉管伸長に及ぼす温度および相対湿度の影響. 園芸学会雑誌, 57(1), 43-51.
・安谷屋信一. (1991). ミョウガ (Zingiber mioga Roscoe) の結実に及ぼす受粉時季と相対湿度の影響および自殖後代における染色体数の変異. 園芸學會雜誌, 60(2), 361-367.
・矢澤進, 小川久雄, 角田利光, 並木隆和. (1985). ミョウガ (Zingiber mioga Roscoe) の種子形成と実生株の特性. 京都府立大学農学部農場報告, 12, 1-7.

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