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2018年 12月 3日

アホウドリの授業

僕が担当している生態学IIの授業では、主に保全生態学の話題を扱っています。今回は、山階鳥類研究所から特別講師として保全研究室室長の出口智広博士をお招きして、アホウドリの保全事業についてお話ししていただきました。

アホウドリは、羽毛や卵目的の乱獲などで一時は絶滅したと言われるほど数を減らした鳥です。しかし、今から70年ほど前に鳥島で十数羽の繁殖個体群が再発見されて以来、東邦大学の長谷川名誉教授が中心となって実施された保全プロジェクトが成功し、今では5000羽を超えるほどにまで個体数は回復しています。それでもなお、繁殖地はほぼ鳥島に限られているため、火山島である鳥島の噴火によってまた絶滅の危機に瀕してしまう大きなリスクがあります。そこで、出口さんらにより10年ほど前から「アホウドリ移住計画」として、鳥島とは別の繁殖地を創設する取り組みが行われており、その苦労と成果を講演していただきました。

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アホウドリは、繁殖のために出生地へ帰ってくる率が高い(里帰りする)という特徴があります。そこで出口さんらは伊豆諸島の鳥島から、安全な小笠原諸島の聟島へアホウドリの雛を移送し、雛にそこが出生地だと刷り込んで、新たな繁殖個体群を創設するという作戦を実施しました(詳しい内容は冒頭リンク先の記事を参照)。2008年に人工飼育した最初の個体が巣立ち、聟島に帰ってきたのが3年後の2011年。それから繁殖行動は見られたものの、未授精だったり鳥島や別の島に飛んで行ったりして難航したそうですが、2016年にようやく聟島で雛が孵りました。小笠原諸島で最後のアホウドリが繁殖してから、実に80年もの月日が経っていました。

安定した保全活動費の確保、政府や地元住民の理解、日本・アメリカ・カナダ・オーストラリア各国の国境を越えた協力、そして何より現場での地道で過酷な努力が、長い年月を経てようやく実を結んだのです。

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ここまで聞くと「アホウドリ移住計画」はもう成功したように思われるのですが、それでも途半ばとのこと。人工飼育した個体の帰還が始まっているとはいえ、聟島の繁殖個体数はまだまだ少なく、10羽以下。これからも継続してモニタリングしていく必要があるのだそうです。さらにあと何年後になるのか分かりませんが、今度はこの「アホウドリ移住計画」が確実に成功しました!というお話を、授業で聞けるといいなと思いました。

今は就職活動真っ只中の学生たち。出口さんからは、目標や夢を実現するためには何が大切か、というお話も最後にしていただきました。社会という広い海原に飛び立っていっても、また時々、アホウドリと同じようにTCEに帰ってきて欲しいですね。

(沖)