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2025年 12月 16日

チュウゴクアミガサハゴロモの産卵痕(産卵枝)の駆除効果を考える

前回の記事ではチュウゴクアミガサハゴロモの駆除には、限定的とはいえ卵を生みつけられた枝(産卵痕:産卵枝)を駆除するのが良いと挙げた。今回は駆除の効果を推し量るために、チュウゴクアミガサハゴロモの卵に注目してみた。

 果たして、チュウゴクアミガサハゴロモの卵はどの様な状態で枝に産み付けられているのだろうか。気になった。幸いなことに、手元には大量の産卵枝があるのでよく見てみることにした。

 チュウゴクアミガサハゴロモの産卵痕(産卵枝)はどの様になっているのか。

写真1 白いワックス状物質が剥がれたチュウゴクアミガサハゴロモの産卵痕(枝) 

写真1をよく見ると、ワックス状物質は剥がれてはいるが、大鋸屑の様な木くずが産卵痕を覆っているのが確認できる。中はどうなっているのだろう。この木くずをナイフでそぎ取ってみたところ卵が現れた。

写真2 木くずの下に隠されたチュウゴクアミガサハゴロモの卵

白いロウ状の物質が目立たなくなると、卵が無くなったような気がしてしまうが、ハゴロモはカメムシ目、いわばセミの親戚である。セミ同様に木の内部に産卵しているのだ。
 互い違いの2列に整然と卵が産み付けられているが、この緻密な作業はノールックで行われている。大したものである。
 次は横から産卵状態を見てみた。産卵痕を横から順に枝を削ぎとり、卵が露出するまで続けると以下の写真3の様になっていた。

写真3 枝の中に斜めに整然と産卵されているチュウゴクアミガサハゴロモの卵

卵は斜めにうみつけられ、その上を木くずで覆い隠してある。卵は若枝の木質部分に入り込んでおり、表面の木くずを除去したぐらいでは駆除の効果が得らそうもない。また、卵を産み付けられている枝の産卵されたの側半分が枯れているのが分かる。枝の一部とはいえ、断面の半分が枯れているのだから、枝の強度も低下していることだろう。実際に、産卵枝を物色している時に簡単に折れてしまう枝(写真4)がいくつかあった。 
やはり、今後の成長など考えると、枝ごと除去するのが確実である。

写真4 産卵痕からポキリと折れてしまったケンポナシの枝。枝の断面に白い卵が確認できる。

次にチュウゴクアミガサハゴロモの産卵痕(傷)が回復途中のカエデの枝を見てみた。

写真5 傷がふさがりきっていないうえに、産卵痕の木くずが一部露出しているカエデの枝

中を確認してみよう。
回復途中の産卵痕表面を薄く削ぎ落としてみると、写真6の様になっていた。

写真6 産卵痕表面を薄く削ぎ落としたところ、ギザギザ状に木くずが確認できるカエデの枝

更に別の枝を用いて横から回復状況を見てみた。

写真7 
写真8
写真9

傷は10mmを超えるものが多く、その枝の内部に卵殻や木くずが隙間として残っている。産み付けられた卵の部分に木くずが盛り付けられており、傷の回復を阻害しているように見える。傷が塞がったとしても、隙間やゴミの詰まった枝ではこの後の健全な成長は期待できない。傷の回復状況(切除は12月上旬)を見れば、暖かい時期に傷が開いていた事は明白で、この部分が菌類や細菌の感染源となる可能性もある。見つけ次第切除して処理をするのが賢明だろう。
 
産卵痕1つあたり卵数は如何程だろうか
無作為に産卵痕を3つ取り出し、産卵痕の長さと産卵数を見てみた。

写真10  産卵痕長 約15mm 産卵数 26卵
写真11  産卵痕長 約15mm 産卵数 26卵
写真12  産卵痕長 約12mm 産卵数 26卵

それぞれの産卵痕には26卵が産み付けられていた。写真外の別枝の産卵痕の中には15mmを超えているものも多くあり、それにつれて多くの卵が産み付けられている様であった。大雑把に考えて産卵痕(枝)を4つも処理すれば、およそ100頭を下らない個体の発生を抑えることができる。動き回る幼虫や成体を捕らえるよりは、遥かに効率が良い。
 このことは、管理地の条件次第で限定的だが、十分な価値のある対策だと思われる。
 
この冬は皆さんも産卵痕(枝)の切除をしてチュウゴクアミガサハゴロモの駆除をしてみませんか。

S田

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