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2023年 1月 11日

斧を研いだら、溝が気になった話。

カトラリー作り用に手斧を入手したのだが、刃を付け(研ぎ)直すことにした。

そもそもこの斧刃は枝払いや薪の小割用の刃持ちの良い状態となっているので、もう少しキレのある刃にしたい。
研ぐ前にブレードをチェックすると、さすがの三条製、きれいに成型されている。
切刃はゆるいコンベックスグラインドで、斧にしては薄く研ぎ上げられている。
これであれば刃先の調整だけで良い結果が得られそうである。

さて、一般的な斧刃の研ぎは刃体が大きく重いので、包丁やナタと違い固定した斧刃上に砥石を滑らせて研いでゆくことが多い。
カーブは逆であるが鎌の研ぎにイメージは近い。
斧専用のディスクストーンなる円盤状の砥石なども手に入るが、手持ちの鎌砥石で十分である。
しかしこの斧は軽量なため、長い柄に注意すれば包丁を研ぐ要領で研ぐことが出来る。

写真1 軽量だが、柄が長い

今回はクラフト用の刃にするため、鋭角の刃が好ましい。
しかし、斧には本来の使い方に合わせた焼きが入っていると思うので、ただ刃を薄くした単純な鋭角では刃が持たないだろう。
徐々に調節して、相性の良い角度を見つけるしか無い。

 刃先を整えるため、刃先のカーブに合わせて砥石上を滑らせる。
砥石に対する刃先の向きこそ逆であるがナイフのカーブ部分を研ぐ要領と同じである。

程なくして刃先が整った。

写真2 刃先が整った斧

研ぎながら斧を見ると、左が3条で右が4条の溝が切ってある。

日本刀や鉈にある溝(樋)の1条とは異なり、合計7条である。

写真3 鉈の樋 1条の溝
写真4 斧の左面 3条の溝
写真5 斧右面 4条の溝

調べてみるとこの溝は7つ目と呼ばれ、制作している鍛冶場や斧を使用している地域によって溝の意味が異なる。
また、斧の右左それぞれ3条ずつの溝がある6つ目もあるようだ。

この斧の溝は、八百万の神々や仏様に見立てる、深山に持ち込めない供物の代わりにする、3本と4本で身(3)除(4)けとする等と謂れは様々だ。
いずれのものも山に分け入る人々が持つ、木や山、自然に対しての畏敬の念が強く現れている。

斧の溝に込められた念を知り、改めて斧に向き合って見た。
鈍く光る7条の溝は、都会で暮らす我々に「自然に対して正しく畏れよ」と訴えかけているようだった。

S田

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